1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 01:31:38.55 ID:4AyriLR90
4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 01:32:53.48 ID:4AyriLR90
いつも一緒、ずっと一緒
そう思っていた
みーこがタイムスリップしてしまう、あの日までは
5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 01:34:53.27 ID:4AyriLR90
ずっとずっと、遠い未来へ
「明日話があるの」
とか昨日言ってきたばかりなのに
それが何なのか言わないうちに行ってしまった
彼女はすごくムカついたけど
取り敢えず1000年だけは生きてみようかなって
マカロン食べながらそんなことを思ったりした
6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 01:36:38.54 ID:4AyriLR90
マカロン大好きメルヘン少女にはちんぷんかんぷんだった
みーこはどこにいってしまったのかと聞いてみたら
「うーん、1000年後くらいかなぁ」
だって
そんな事言われても、ふわふわとしていて彼女には実感がわかなかった
でもやっぱ、なんとかなるんじゃないかなぁと思ったのだ
なんとなくだけど
根拠はないけれど
7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 01:38:17.52 ID:4AyriLR90
IPS細胞とか、テロメアをどーのこーのする実験らしいけど
彼女にはよく分からなかったし、分かろうともしなかった
ただ、日課のマカロンを少しの間控えなければならなかったことだけは堪えた
1000年後にみーこに文句言ってやろう
そう心に誓い、薬を4粒飲み込んだ
彼女は幸運にもあっさりと、不老不死になったのだった
8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 01:40:28.49 ID:4AyriLR90
なんたって彼女はすごく美人で、透き通るような長いブロンドの髪がとっても綺麗だったから
でも彼女はみーこ以外とはあんまり喋ったことはなかったので
友達がいたことはなかったのだ
だから友達が出来たことを表には出さなかったけど
ホントはとってもうれしくて
嬉しくて
部屋の中でちょっとステップしたりして
9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 01:42:18.78 ID:4AyriLR90
自由だったし、ポッキーは食べ放題だった
ただ、3日に1人くらいのペースでお友達は死んでいったから
それは少し悲しくて、やるせなくて
職員の太ももの裏をガシガシ殴ったりした
怒られたけど、取り敢えず20回を目標に殴り続けた
ガシガシと、ガシガシと
11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 01:43:31.01 ID:4AyriLR90
「そっかー、それは仕方ない」
「うん、だから太ももの裏のほうを執拗に殴らないでおくれ」
そう言う職員が下半身から崩れ落ちるのを眺めながら
まぁ仕方ないのかなぁなんて思って諦めることにした
そもそも彼女は事前の話を全く聞いていなかったので、
なんとなく納得をしていなかった
彼女は研究所から脱走をすることにしたのだ
13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 01:46:18.62 ID:4AyriLR90
窓からぽーんと飛び降り、そのまま全力で逃げ出したのだ
後ろの方からは特に声もせず
なんだか走ったのが損した気分になった
そんなわけで、彼女は競歩で街まで歩き続けた
不老不死になった彼女であるが
七時間競歩を続けると足が痛くなることを学んだのだった
14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 01:48:37.63 ID:4AyriLR90
不老不死の彼女でもお腹は減るものだ
お腹が減ったところで死にはしないけど、おいしいご飯を食べると幸せになる
幸せのために食料の確保は必須だった
道行く人達はみんなびっくりしていた
なんたって、ブロンドの年端もいかぬ女の子が満面の笑みを浮かべながらごみ箱を漁っているのだ
とつぜん非日常が眼前に転がり込んできたので、みんな見て見ぬふりをした
15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 01:49:50.97 ID:4AyriLR90
そう話しかける物好きなおじさんが現れたのは、それから3日後のことだった
「死なないけど、お腹が減って死にそうなのでご飯を探しています」
「よくわからないけど、取り敢えず分かった」
困惑した表情を浮かべながらおじさんは偶然手に持っていたマカロンを1つ、彼女に渡した
16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 01:51:35.04 ID:4AyriLR90
「いいよ、死にそうなんだろう」
「絶対に死なないけどありがとうございます。やったー」
そのまま彼女はおじさんの家までついていって
おじさんの家のマカロンも2つ食べたのだった
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 01:52:08.86 ID:4AyriLR90
「娘が好きだったんだよね」
遺影を前にそんなことを言うと、おじさんは少し泣きそうになっていた
おじさんがあまりにも寂しそうだったので仕方なく、
彼女は頭をよしよしと撫でてあげた
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 01:54:37.76 ID:4AyriLR90
「がんばろうかな。うん頑張るよ」
「よろしい」
おじさんは「なんか娘が生き返ったみたいだ」なんて言っていたけど、
彼女は未来に行ってしまったみーこがそこで死んでないか、ちょっと不安になったのだ
21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 01:56:14.96 ID:4AyriLR90
「私は千年後に行かなきゃいけないのですよ」
「千年後か。それは大変だね」
「あ、信じてないでしょ。絶対信じてない。信じろ!」
「わかったよ。信じるよ」
「よろしい」
「それじゃあ、うちで千年後を待つのはどうだい」
「おお。それはいい案ですね」
「いい案だろう」
「よろしくお願いします」
「いえいえ、こちらこそよろしく」
「しかたないですね、よろしくお願いしてあげますよ」
「うーん。なんだこれ」
23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 01:58:30.07 ID:4AyriLR90
彼女は特に何をするというわけでもなく、毎日を持て余していた
暇なんだね。
そう言われると彼女は少し怒って
「公園で蟻の観察をしたり、砂場の砂利の数を数えたりしてるよ!」
なんて言い、ぴかぴか光る極彩色の空をぼーっと眺めるのだった
兎にも角にも、暇であったのだ
25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 02:01:45.27 ID:4AyriLR90
そんな時は頭をよしよしと撫でてあげた
なんで娘は死んだのか、何の仕事をやっているのか
奥さんはどこにいるのか、友達はいるのか
そんなことは一切聞かなかったけど
聞いておけばよかったなんて、もっとお話をすればよかったなんて
その時の彼女は全く思ってもいなかったのだ
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 02:03:34.63 ID:4AyriLR90
おじさんは7年と12日目に病気にかかり、7年と31日目に死んでしまった
伝染性の流行り病だったらしい
街の人達もみんな死んでしまったけど、彼女は不老不死だから生き延びた
生き延びてしまったのだ
27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 02:05:20.81 ID:4AyriLR90
無人の街でひとり、おじさんのお葬式をする
吹き付ける風が妙に寒くて、空の色が消えた気がした
彼女は空を見上げながら、おじさんが買ってくれた最後のマカロンを食べた
そのマカロンはいつも通り美味しくて、初めて会った時からずっと美味しくて、それで彼女はちょっとだけ泣いた
マカロンを食べ終え、涙を拭くと
彼女はそのまま前を向いて歩き出したのだった
28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 02:07:16.06 ID:4AyriLR90
果てない荒野を
煌めく海岸線を
揺らめく木々の隙間を越えて
立ち並ぶ高層ビルを越えて
地平線の向こうに
水平線の向こうに
彼女は歩き続けたのだ
29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 02:09:11.29 ID:4AyriLR90
30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 02:12:47.21 ID:4AyriLR90
彼女が歩いている間に中国という国が滅びていた
世界はそのことでごたごたしていたけど、彼女にはあまり関係なかった
200年が経ったところでとある組織の研究所に戻ってみると
もうそこは跡形もなく消えていた
代わりに空中バスのターミナルになっていたので、
彼女は初めて空中バスに乗ることにしたのだった
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 02:14:11.99 ID:4AyriLR90
中に乗っているのは彼女だけだ
ふと思い立って彼女はふわり窓から飛び降りた
肌を風が切り、眼前に大地が広がる
空から眺めるこの広い世界には、もう彼女の知り合いは誰も居ないのだろう
世界はいつでも広大で、いつも一人ぼっち
みーこは元気にしているのだろうか
ふとそんなことが頭をよぎる
そのまま彼女はとしゃんと湖にダイブした
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 02:16:47.80 ID:4AyriLR90
日本人は血眼でエコを訴えていたけど
人も大分減っていたのであまり問題は起こっていないようだった
彼女は海水浴がすごく好きなのでとても喜んだ
7日に26回くらいは海で泳いだ
デジタル水着は嫌いだったので裸で泳ぎまくった
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 02:19:16.70 ID:4AyriLR90
100年で地球の七分の二くらいの陸地が海に消えていった
世界はなんだかもう終わりのムードに包まれていて
じさつ者がついに年間1000万人を突破したらしい
そんな絶望的な空気が漂う世界で彼女は今日も海水浴を続けるのだ
肌が小麦色に焼けて凄く健康的になっていた
一日中バタフライで海を彷徨えるくらい泳ぎをマスターした
地球温暖化バンザイ!
彼女はひとり泳ぎながらそう叫ぶのだった
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 02:20:15.24 ID:ZjiN79erO
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 02:22:03.70 ID:4AyriLR90
彼女の泳いでいる海岸のすぐそばに
物凄い衝撃で、彼女以外の人間なら即死だったけど
彼女は不老不死だったから平気だった
びっくりしたな~と思い、彼女が隕石に近づくと
そこにはマシュマロみたいにふわふわの白い変な生物がぷよぷよ鳴いていた
取り敢えず彼女はその生物を浜辺に持って行って小麦粉を食べさせると
ぽよぽよ鳴いて元気に食べていた
なんだこれ。なんだこれ。
40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 02:24:09.01 ID:4AyriLR90
毎日毎日小麦粉と、時々ギモーブ食べさせるのであった
シュバちゃんは、ぼたん餅みたいにふよふよしながら小麦粉を食べていた
地球温暖化で世界が終わりかけている最中に彼女はシュバちゃんと遊ぶ日々を送っていた
のんきなものである
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 02:26:46.65 ID:4AyriLR90
さすがの事態に彼女も驚嘆して、これは面倒見切れないと思い
どっかの家にシュバちゃん達を持って行く事にした
これ以上増えすぎても与える小麦粉が足りないのだ
「ごめんよ・・・私がバタフライばかりしてるばかりに・・・」
そんなことを呟きながら、彼女は今日もバカンスライフを送るのであった
生活を改善する気はまるでなかった
42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 02:29:22.19 ID:4AyriLR90
そう言って彼女は小麦粉をいっぱい与えてくださいとしっかり伝え、
シュバルツクーゲルシュライバー1号から150号はどっかの知らない心優しい人の家に引き取られていった
シュバちゃんたちは悲しそうな表情でぷよぷよ鳴いていた
43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 02:30:10.38 ID:4AyriLR90
そしてその5年後に世界的政策でシュバちゃんの計画的増加実施に至ったのだった
シュバちゃんは世界の二酸化炭素を吸い込み、あっという間に地球の気温を下げた
彼女からシュバちゃんを引き取った研究者は世界を救った人として
ノーベル平和賞と10億円を頂いたのだが、それを彼女が知ることは無かったのだった
シュバちゃんは巷では「神」と呼ばれ、今でも世界中で愛されている
45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 02:33:40.37 ID:MQ6j/aZ10
47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 02:37:25.97 ID:4AyriLR90
全くの余談なのですが、
木一本が吸い込む二酸化炭素の量は、人が吐く二酸化炭素の十三分の一
普通の車一台が出す二酸化炭素の五百分の一
普通の家庭が出す二酸化炭素の1500分の1と、
めちゃくちゃ微量だったりします
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 02:39:54.66 ID:4AyriLR90
地球の気温も下がり、海で泳ぐのも寒くなったので彼女が200年ぶりにバカンスライフをやめた時、
もうこの地球でわからないことなどほとんど無くなっていた
地球の誕生も、生命の神秘も、深海の謎だって全部解明されてしまった
科学者たちは未知の世界に夢を託し、宇宙についての研究がいっそう盛んになっていったのだ
宇宙開発ブームの到来である
49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 02:42:58.95 ID:4AyriLR90
そんな中、彼女はというと、公園でドッジボールをしている少年たちと仲良くなった
あまりにも暇すぎた彼女はバタフライで鍛えた驚異的な背筋力で公園のいたいけな子供どもをなぎ倒す日々を送っていたところ、
どういうわけか少年たちの人気者になってしまったのだ
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 02:45:25.44 ID:4AyriLR90
ドッジボールが弱くていじめられていた体の弱い男の子だったが
その少年も例に漏れず宇宙研究者になりたいと思っていた
51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 02:48:39.52 ID:4AyriLR90
ブロンド髪のメルヘン少女である彼女だが、師匠と言われるのは初めてだったので大層気分をよくしたのだった
彼女は少年に
「弟子にして欲しかったら一ヶ月に一回マカロンを持って来なさい」
と言い、毎月マカロンを貢がせていた
いたいけな少年は喜んで彼女にマカロンを貢ぎ続けたのだった
悪女である。650歳の愛され悪女である
53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 02:51:32.94 ID:4AyriLR90
「うーん、泳ぐといいよ」
「泳げばいいんですか!わかりました!毎日泳げば大丈夫ですよね!」
「そうだねー。毎日21時間、それを二百年くらい続ければ強くなるよー」
「さすが師匠!すごい!頑張ります!」
「がんばれー」
「はい、素晴らしい助言誠にありがとう御座います!」
「いいよー。来週マカロン忘れないでねー」
「はい!了解しました!」
55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 02:53:59.08 ID:4AyriLR90
十年たっても、二十年たっても、少年は彼女のことを師匠と呼び、毎月マカロンを持ってきた
「師匠は老けないですね!」
「むかし不老不死になったんだよー。すごいでしょ」
「凄いです!さすが師匠!」
「でしょー。もっと褒めたまえ」
そんな他愛のないやり取りを暇な時に繰り返していた
そんなある日、彼女は少年の髪に白髪を見つけた
彼女は少し寂しくなったけど、何も言わなかった
彼女の精一杯の強がりだった
57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 02:58:25.90 ID:4AyriLR90
もう少年のほうがずっと見た目は年上だったけど、
彼女は上から目線で偉そうにしていたし、少年にとって彼女はいつまでたっても師匠だった
傍から見たら変な関係だったろうけど、
彼女たちにとっては自然で、とても楽しいものだった
58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 03:00:36.67 ID:4AyriLR90
となると次は宇宙の外について調べるようになるのは自然の流れだ
ホワイトホリー号という最新宇宙船に乗って、宇宙研究者は宇宙の外を目指して飛び立った
宇宙船の航海は万事うまく行き、ワープを繰り返してついに宇宙の外に出ることに成功した
59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 03:02:27.40 ID:4AyriLR90
「ちょっと5年くらい留守にしますけど、帰ってきたら宇宙の外側のスイーツとか持ってきますよ」
そんなことを言って、もう定年を迎えそうなほど老いた少年は宇宙に飛び立っていった
彼女はがっかりしたけどまた5年後に60ヶ月分の未知なるスイーツを貰えると思うとわくわくした
「無理しないで死ぬほどがんばってね!」
と元気よく少年を見送ったのだった
60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 03:05:11.08 ID:4AyriLR90
『私達は幸福を発見した』
そのメッセージとともに、ホワイトホリー号からの通信は途絶えた
62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 03:06:32.37 ID:4AyriLR90
好奇心に勝てない世界中の宇宙研究者たちはみな宇宙の外側に向かって飛び立ち、
そして二度と大地を踏むことはなかった
63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 03:07:52.05 ID:4AyriLR90
本当に幸福があったのかなんて、誰も知らない
でもきっと、もう少年は戻ってこないのだろう
彼女はずっと待っていたけど、とうとう5年たっても少年は公園に帰ってこなかった
たったひとりの愛弟子が、宇宙の外側で幸せに暮らしていたらいいなぁと
そんなことを思ったり、願ったり
66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 03:15:06.13 ID:4AyriLR90
ある日突然、ハワイが消失した
ある大国の大統領が暇だからという理由で核兵器を島にぶっ放したからだ
他の国の人達も大激怒して、世界大戦が始まったのだった
するとびっくりしたことに、3日くらいで大体の国が滅びてしまった
決壊したダムみたいに、世界はあっさりと終わりを迎えたのだった
67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 03:18:28.08 ID:4AyriLR90
世界は北斗の拳みたいになってしまった
彼女は不老不死だったけど、恐ろしかったので隠れ続けた
もう少し、もう少し我慢すればみーこに会える
あとたった200年じゃないの
68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 03:19:55.03 ID:4AyriLR90
全盛期は370億人いた地球も、1000万人しかいなくなっていた
火星に移住した人たちも、もう地球を完全に見捨てていた
培われた地球の技術は全て失われ、放射能で荒れ果てた死の惑星に劇的ビフォーアフター
そして極めつけは巨大隕石の衝突だった
衝撃で舞い上がった砂塵が大気圏を覆い、太陽の光を遮断した
世界が灰色になってしまった
69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 03:22:12.43 ID:4AyriLR90
超氷河期が訪れ、残りの人類の方々も皆死んでいった
誰もいない世界、彼女はそれでもみーこを待ち続けた
いつか来る千年後まで、待たなきゃいけないんだ
みーこの大事な話を聞かなきゃ
頑張ろう、頑張ろう
言葉を吐くと、彼女の口から血が出た
彼女の体に異変が起こるなんて、約千年ぶりのことだった
71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 03:23:43.21 ID:4AyriLR90
放射線は彼女の遺伝子をぼろぼろに壊していた
いつの間にか彼女は不老不死じゃなくて、
普通のどこにでもいるマカロン大好きメルヘン少女になっていた
73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 03:27:15.27 ID:4AyriLR90
灰色の世界
色もなく、光もない、ぐちゃぐちゃになった世界
そろそろ帰りたいな
どこか、私の知らない場所へ
74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 03:28:37.62 ID:4AyriLR90
世界の移り変わりとか
いろんな人との別れとか
もう疲れちゃった
76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 03:31:01.01 ID:4AyriLR90
おじさんにマカロンは貰ったし
世界中を旅したし
毎日バカンスを楽しんで、変な生物を拾って
初めて弟子ができて、世界が滅びて
もう十分、十分だよ
77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 03:32:09.64 ID:4AyriLR90
最後に、最後にみーこに会いたいな
会いたいなぁ
―――――――
78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 03:35:13.80 ID:4AyriLR90
灰色の世界に何十年ぶりの明るい光
こんなのが見えるなんて、きっともう終わりは近いんだろう
どこからか幻聴が聞こえた
それはどこかで聞いたことがある声だった
彼女はもう目は見えなかったけど、
わかったのだ
80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 03:38:16.83 ID:4AyriLR90
「うん、久しぶり」
「元気だった?」
「すこぶる元気だったよ」
「そっか、それはよかったよ」
「うん」
「あのね、ずっと言いたかったことがあるの」
「なぁに」
「私レズなの。ずっと愛してた」
「私も愛してるよ。マカロンくらい愛してる」
81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 03:41:22.97 ID:4AyriLR90
マカロンもスイーツもない世界で、
人類は幸せに滅びたのだった
83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 03:42:54.18 ID:4AyriLR90
へんてこで、それでいて
幸せなお話
82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 03:42:37.43 ID:nO+RUeKI0
すっげーかなり好きかも。
ありがとう。
泣きそうなった。
84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 03:46:04.90 ID:GwafRvnmO
なんと幸せな鬱エンド
85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 03:48:12.11 ID:nO+RUeKI0
86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 03:48:27.05 ID:4AyriLR90
読んでくれた人がいたらありがとうございました
90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 03:50:52.15 ID:tCHQR/cu0
乙
92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 03:53:13.50 ID:8CCxsaR30
このスレは保存しておこう
94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/04(水) 03:54:37.13 ID:nO+RUeKI0
こんな感じの短編みたいな小説ってないかなーすげー好き
こんな感じの漫画書きたいわーいいなぁ
引用元:女の子がどうにかこうにか千年生きる話
星真一と遠藤周作を足して2で割って
返信削除語彙だけラノベにしたという印象を受けた
宇宙に旅だった人は何を見つけてしまったのか。
返信削除でも、人類は滅びてしまったってことは、そっちも滅びちゃったんだろうなぁ。
しかし、1000年人類が残るのか不安になる最近。